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スズキ的イチニチ
第110話
「やさしさ」
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「 やさしさ 」
昔先輩に「優しさ」について教わったことがあります。
寒い地方に毎年その地域にある湖に渡り鳥が来るそうです。
ある年、大寒波に見舞われて湖面が分厚い氷に覆われてしまって渡り鳥たちが餌にありつけなく多くの鳥たちが餓死してしまったらしいです。毎年渡り鳥たちが来ることを楽しみにしているある老人がご飯が食べれない鳥たちを不憫に感じたのでしょうか多くの渡り鳥たちに餌を毎日あげて飢えをしのがせてあげたらしいです。
鳥たちは大層喜び毎日老人が来ることを待ち焦がれたらしいです。
そんな日が何か月も続き渡り鳥たちが別の地域に渡ることなく老人と交流を深めたらしいです。
でもある時老人が不慮の事故で亡くなってしまいました。鳥たちは毎日餌をくれる老人を待ち焦がれ自分たちで餌を取る習慣がなくなっていたそうです。
だんだん体力の弱い鳥たちから餓死をしていき最終的には全ての鳥たちがなくなってしまったそうです。
鳥たちが餌を取ることを忘れてしまったのが悪いのか?無暗に野生の動物に手を差し伸べてしまった老人が悪いのか?本当の優しさって何なのか?考えさせられるお話でした。
ここからお話しすることは賛否両論があると思いますし私のお話で私のことが嫌いになるかもしれませんが上記のお話を踏まえていただいた上でお読みいただければと思っております。
昔々ある日私はいつものように駐車場から車を出してお客様のワンコ達を迎えに行こうと家から出ました。なぜか私の駐車場で背を向けてしゃがみ込んでいる奥様に出くわしました。
その人はポケットから猫の缶詰をだして野良ネコちゃんたちにご飯を与え始めました。いい匂いがしたのでしょうか?周りから数匹の猫が集まりみんなでその奥様の囲みおいしそうに食べていました。皆さんはこの時点でどう思われますか?「なんて優しい方なんだ」「人の駐車場で勝手に何してんだ?」ペットが大好きでお店まで経営している私の回答は「後者」です。
私は動物が好きでこの道を選びました。恵まれないワンコや猫たちの里親が見つかるまで一時的なシェルターしたり東北の地震の際で飼い主が一時的に預かってほしいという要望も受けてきましたが、野良ネコちゃんたちの屋外での餌付けは正直大反対です。大体餌付けをする人たちは「猫たちがかわいそうじゃない」と反論されますが世の中には猫が嫌う人たちもいますし野良ネコちゃんたちによってお庭を荒らされたり排泄されたり病気をまき散らされたりすることがあるということを理解していない方が多くいらっしゃいます。私からすれば本当にかわいそうと思うならば自分の家に連れて帰りお家の中でかわいがってあげることが猫のためになると思われます。下手に野良ネコちゃんたちに手を出して不用意に餌付けをすれば猫が集まり地域のコミュニティーが崩壊しかねます。
猫たちも自分で餌にありつく努力をしなくなります。これは本当の優しさではないと私は思いますがいかがでしょうか?
結局その奥様とは一時間くらいお話をしましたが納得はいただけませんでした。ただ「どうしてもご飯をあげたいのならばご自身の敷地内でしてください」とお伝えをしたのですが「汚れるからいや」と素敵なお言葉をいただき「プイッ」と足早におかえりいただきました。とりあえずその日以来駐車場でご飯を与えている姿は見えませんが車に猫の足跡だけはなくなることはありませんでした。猫たちも車があったかいということはわかるんですね。とりあえず車のフロントガラスを拭くことがその当時の私の日課になっていました。。
猫たちにご飯をあげたくなる気持ちもわかります。人間の事情で野良ちゃんになったのであればやはり猫達が可哀そうと思います。一番悪いのは猫を捨てた人間です。しかし地域コミュニティーで人間と野生の動物が共存するという側面での本当の優しさって何ですかね?
皆様ならどうしますか?